地理的表示の保護制度ってご存知ですか?

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【第6話】ついに登録500号達成!
「仙台いちご」が地域団体商標に・後編

2012年04月24日

ご当地ブランド保護制度設立へ

地名を冠した食品ブランドを保護する新制度の創設に向け、農林水産省は3月に有識者らで構成する研究会を発足させる。地域ならではの製法や品質を備えている食品が対象で、「草加せんべい」や「泉州水ナス」、「鹿児島黒酢」などの登録が想定される。
国が品質を保証することでブランド力を高め、海外を含めた販路の拡大につなげたい考えだ。

農水省が導入を進めるのは「地理的表示の保護制度」と呼ばれる仕組みで、2013年の通常国会への関連法案の提出を目指す。

2012/2/23 【日本経済新聞】

前編のつづき—後編は農水省の“地域ブランド保護制度”について

こんにちは。JAZY国際特許事務所・編集長の浅見杳太郎です。
先の『JAZY NOW』【第5話】では、「仙台いちご」が地域団体商標に登録され、登録件数がついに500件に到達したという話題をお届けしました。それを受けて今回は、地域ブランドを保護・育成する別の新しい制度・「地理的表示の保護制度」についてお話していきたいと思います。
ちなみに、今回の取り上げるこの新制度は農林水産省が導入を進めているものですから、経済産業省(特許庁)が所管する産業財産権(工業所有権)とは違います。「産業財産権」という用語には明確な定義はないものの、日本の特許庁では、自らが所管する特許権・実用新案権・商標権・意匠権の4つの権利を「産業財産権」としています。
そういう意味において、この農水省が導入を目指す新制度は、特許事務所が取り扱う範疇外にあると言えるわけですけど、実はJAZYって、特許事務所だけでなく、ブランディング会社でもあるんです。

商標権、意匠権、特許権、実用新案権の出願・登録のサービスをメインとする「JAZY国際特許事務所」と、地域や企業のブランディングコンサルティングをメインとする「JAZYブランディング株式会社」。
—そして、そういった“産業財産権”と“ブランディング”を両輪とするのが『JAZY GROUP』、というわけなんです。だから、これからは、産業財産権についての話題だけではなく、広く“知的財産”や“ブランディング”についてもお話をさせてもらうことになるかと思います。
その際は寛容なお心で、どうかよろしくお付き合いください。

ということで、さっそく今回、農水省の“地理的表示の保護制度”について取り上げさせていただきます。さて、この新制度、いったいどんな内容なんでしょう?

「地理的表示」ってなあに?

「地理的表示」って「知的所有権」のひとつなんです

「地理的表示」って、日本ではあまり耳にしない言葉かもしれませんね。
農林水産政策研究所の資料によると、「地理的表示」とは…「いわゆる地域ブランドで、その品質等の特性と原産地が結びついている場合に、その原産地を特定することとなる表示」とされています。

例をあげるとわかりやすいでしょうか。例えば、こんなものが該当します。

・シャンパン/フランス・シャンパーニュ地方
・パルマハム(プロシュート・ディ・パルマ)/イタリア・パルマ地方
・リオハ・ワイン/スペイン・リオハ地方

うん、なるほど。
シャンパーニュやパルマといった特定の原産地の特定の環境下にあることで、“シャンパン”や“パルマハム”のあの品質が実現されているんですものね。
このように「商品の品質・特性」が、「原産地の土地柄」に深く由来している場合に、初めて土地の名前を商品に冠することができる、というのが「地理的表示」のルールだということです。そして、この「地理的表示」は、条約や法令によって保護される、立派な「知的所有権」のひとつでもあるのです。ただ製品に地名をくっつけて表示するというだけの話ではなく、商標や意匠などと同じく実際的な権利が付与されるということです。

さて、今までの話を簡単にまとめると、「地理的表示」とは…『知的所有権として保護された、地名を冠する食品ブランド』ということになりますね。とりあえず、これだけ押さえておいてもらえればOKです。

「地理的表示」の歩み

「地理的表示」は、商標や特許などに比べると、比較的歴史の浅い権利です。100年以上も前から一部の国で認識されてはいたのですが、ひとつの確立された権利として世界規模で拡がることはありませんでした。しかし、1994年に行われたウルグアイ・ラウンド(貿易自由化に向けた通商交渉)において、TRIPS協定(マラケッシュ協定の付属文書)が成立したことによって、風向きが大きく変わります。このラウンドで初めて、「地理的表示」が、商標や特許などと同じような知的所有権のひとつとして認められたのです。
そして、現在では国際的な強制力のある知的所有権として、世界に認知されるに至っています。この「地理的表示の保護制度」の取り組みについては、欧州連合(EU)が積極的かつ先進的です。
一方、アメリカやオーストラリアは貿易障害になりやすいとして消極的な姿勢を取っています。やはり、食品に対する文化・伝統への考え方の違いが出ていますね。
ヨーロッパでは産品に地名を冠するという方法は、古代から採られていたというのですから、年季が違います。古代から中世、近世を通して、産地によって商品を区別するという意識は、ヨーロッパ世界において確実に育まれていったのです。

「分類」と「ブランド」

19世紀には、産品に地名を冠して同種の品々と区別するという「分類」が、すでに定着していたといいます。そうして分類された産品は、互いに比較され、優劣をつけられていきました。そうした中で、特に良質な商品を産み出す産地は、しだいに国内外からの名声を集めるようになるのです。例えば、ロワール産のワインはおいしいぞとか、アルモー海岸で獲れる天然のホタテは最高だ、などといった具合に。
当時はまだ、知的所有権としての法的な地位は確立できていなかったものの、これってほとんど、今で言う「地理的表示」、「ご当地ブランド」ですよね。

※ここでちょっと、うんちく。
「ブランド」の語源っていうのは、「焼印(古期スカンジナビア語のBrander)」なんだそうです。牛飼いが自分の牛と他人の牛を区別するために、焼きごてでジューっと牛の体に印をつける、アレですね。だから、「ブランド」の原義は「区別」「分類」にあるわけです。

「地理的表示」って必要なの?
 —日本には「地域団体商標」があるけれど…

さて、「地理的表示」は『知的所有権として保護された、地名を冠する食品ブランド』でした。
そう聞くと、思い出しますね。この記事の題名にある「仙台いちご」—そう、地域団体商標です(地域団体商標に関しては【第5話】参照)。
日本には、“地域団体商標”があるというのに、どうして農水省は今、「地理的表示」の導入を検討しているのでしょうか?

A.「地理的表示」とB.「地域団体商標」ってなにが違うの?

※ここでの「地理的表示」はEUの仕組みに準拠します。

【相違点1】生産・品質基準について
A.では基準を満たすもの以外は認められないが、B.には基準がない(品質は保護要件ではない)

【相違点2】地名について
A.の表記は原産地しか認められないが、B.の表記は原産地ではない場合がある(製法の発祥地など)

【相違点3】使用者について
A.に関しては基準を満たすものならば誰でも使用できるが、B.に関しては権利者は団体となる(独占権をもつ)

【相違点4】品質管理・偽物対応について
A.では行政が責任をもってコントロールしていくが、B.では権利者自らが行う

【相違点5】権利の存続期間について
A.は永続するが、B.は10年(更新は可能)

さて、相違点を5つ挙げてみましたが、ポイントは…「地理的表示については、“生産基準”や“管理措置”に関しても行政が責任を負う」ということですね。
TRIPS協定の枠組みの中、EUの仕組みに基づいた「地理的表示制度」が世界標準となりつつある今日、現行の「地域団体商標」だけでは不十分なのでは、と国内では常々問題視されていました。確かに日本は貿易立国として、世界標準とかけ離れることは避けるべきことなのかもしれません。農林水産省の研究会は今まさに、この新しい知的所有権をどう扱っていこうかと考察している最中にあることと思います。研究会がどういった判断をするのか、注目ですね。

地理的表示制度が導入されると、どんなメリットがあるんだろう?

農林水産業と地域振興

何度も繰り返して恐縮ですが…「地理的表示」=『知的所有権として保護された、地名を冠する食品ブランド』でした。
これは言い換えてしまえば、『農林水産物による地域ブランディング』ですよね。
そして、農林水産物(食品)と「地域ブランド」なんですが、この両者って本来的に親和性が高いと言われているんです。相性がいいんですね。食文化については、先にも述べましたが、生産者・消費者ともに「産地」の認識が根付きやすく地域性が大切にされる傾向にありますし、農林水産物はそもそも地域の自然環境・社会環境に左右されるものなのですから。
また、経営の観点から言っても、食品ブランドを地域レベルで扱っていくことは、個々の経営体が小さい農林水産業者や食品製造業者にとっては、大きな利益のあることなのです。

◆消費者メリット

消費者にとっても、食品の地域ブランド化は歓迎されるべきことではないでしょうか。品質保証はもちろんのことですが、それ以外にも“物語”という大きな付加価値を与えてくれるのですから。食品はもはや、ただの栄養の摂取のためだけにあるのではありませんね。特定の地域で、特別な製法によって手間暇かけて作られた由緒ある産品、という“物語”は、消費者にとって、“味”や“品質”以上に大きな価値を与えてくれるものになりうるのではないかと思います。
「地理的表示の保護制度」—はてさて、日本でも導入されるのかどうか。今から楽しみですね。

それでは、今回はこれにて失礼します。ごきげんよう。

編集長・浅見杳太郎、頓首。

「JAZY NOW」は、商標や知財に関する話題をわかりやすくお届けすることを目的としています。そのため、厳密に言えば正確でない表現を用いたり、例外にまでは言及していない場合があります。
個別具体的な案件については本記事にのみ基づいて判断せず、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

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