特許制度のグローバル・スタンダード化はできるのか?

5大特許庁会合(IP5)で特許制度の共通化に向けた協議が始まります。

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日米欧など特許の世界共通化に着手
—「世界特許」への思いと、現実的な中国の囲い込み

2012年03月12日

特許 世界共通化に着手、日米欧など中国取り込む

政府は6月から米国、欧州、中国、韓国と特許制度の共通化に向けた協議に入る。発明を論文などの形で出願に先立って公表した発明者の救済策や、審査中の特許技術の公開など40項目が対象になる。特許制度を整備して企業が世界で事業展開しやすい環境を整える。特許出願が急拡大している中国に協調を促し、国際的な枠組みに取り込む狙いがある。

2012/3/6 【日本経済新聞】

中国の国旗

こんにちは。JAZY特許事務所・所長弁理士の加藤です。

今までの『商標NOW』でも、中国の商標登録トラブルなど、さまざまな知的財産権侵害に関するローカルリスクについてのトピックをお届けしてきました。

最近ではアップル社の商標権侵害問題などから、中国が特にクローズアップされていますね。
しかし、中国だけでなく、それぞれの国によって知的財産権に関するとらえ方、解釈の仕方には、そもそも違いがあるものなのです。

つまり、国の数だけ知的財産の取り扱いルールがあるということ。特許や商標を出願するにあたって、その煩雑さは、企業の大きな重荷・足かせになっているのです。

そうした“混沌(こんとん)”を、“調和”へと変えていこうというニーズは、当然、以前からありました。

今回の『商標NOW』では、こういった特許制度のグローバル・スタンダード化を目指す動きを、わかりやすく解説していきたいと思います。

―ここでもやはり、台風の目は“中国”です。

特許の世界共通化は以前からの悲願?

90年代以降の企業活動のグローバル化に伴い、世界の特許出願数は、今や年間200万件近くに上っています。
そして、そのうち外国への出願は4割を占めているといいます。

独占権たる特許は、企業などが事業を展開していく上での、重要な戦略ツールのひとつです。今後さらに、特許の存在感は大きさを増していくことでしょう。

しかし、国ごとに特許制度の枠組みは違います。もちろん、言葉も違います。

だから、海外への特許出願には、余分な手間と時間と費用が掛かるのです。
なにせ、出願に際しては、その国の言語に翻訳しなければいけませんし、さらに各国に合わせた書面の作成や、そのほか複雑な手続きが求められるのですから。

ゆえに、企業は特許制度の共通化を、以前から熱望していたのです。

きっかけのひとつはアメリカの“宗旨”替え―「先発明主義」から「先願主義」へ

5大特許庁長官会合のようす

とくに特許制度の国際共通化を訴え続けてきたのが、日本、アメリカ、ヨーロッパなどのいわゆる“先進国”の国々です。
日本・アメリカ・欧州・中国・韓国で、世界の全特許出願の8割を占めている状況なのですから、共通化に対するニーズが大きいのは当たり前ですね。

2007年から、それら日・米・欧・中・韓からなる特許庁長官会議(5大特許庁会合/IP5)が開かれており、特許制度の共通化について協議が進められてきました。

先ほども述べましたが、国際出願の大きなネックのひとつは“言葉の違い”にあります。
国際化に伴い世界の特許文献が増えていけば、先行技術を調査するのにも、自然、多くの言語と向き合わなければならなくなります。これは大変な負担です。

ですから、特許文献を効率的かつ網羅的に調査するためには、どうしたって言語に依存しない特許分類が必要不可欠になってくるわけですね。
そうした中で、アメリカは2010年10月に欧州特許分類の採用を表明しています。

そして、さらにアメリカは各国に歩み寄りを見せ、2011年9月には、大きな決断を下しました。

最初に発明した人に特許権を与える「先発明主義」から、最初に特許出願をした人に特許権を与える「先願主義」へと、大きく“宗旨”を変えたのです(「リーヒ・スミス米国発明法」)。

この大きな転換が、特許共通化への歩みを促すひとつのきっかけになりました。
今後、特許だけでなく、意匠や実用新案の共通化も進められる見通しだといいます。

“特許の世界共通化”って、「パリ条約」や「PCT」とは何が違うの?

◆出願の際の負担軽減のために

法律とは一般にその国の領域内でしか効力を発揮しないものです。
ですから、特許や商標といった産業財産権も、それぞれの国の中でしか、その効力は及びません。

つまり、権利がほしければ、国ごとに出願しなければならないということですね。
そうなると、先にも述べたとおり、言語上、手続き上、とても手間暇がかかってしまいます。

そういった問題を解消するために、各国間で国際条約を締結し、出願の際の負担軽減を図ろうという取り組みがなされてきたのです。
そのような条約の内、日本が締結している主な条約として、「パリ条約」と「PCT(特許協力条約)」が挙げられます。

◆「パリ条約」と「PCT(特許協力条約)」とは

知財に関する国連の専門機関
WIPO(世界知的所有権機関)
(1)パリ条約

正式には「工業所有権の保護に関するパリ条約」といい、1883年にパリで締結されました。
この条約の主な規定は、①「内国民待遇」と、②「優先権」が与えられるということです。

  • ① 「内国民待遇」とは、加盟国の国民は他の加盟国の国民と同じ取り扱いを受ける、ということ。
  • ② 「優先権」(「パリ優先権」とも呼ばれています)とは、加盟国のどれかひとつにでも出願しておけば、他の加盟国においても、最初の出願日で出願されたのと同じ扱いを受けられる、ということ。

「優先権」などは特に、翻訳するための期間が必要な外国への出願の際には、ありがたい規定ですよね。「パリ条約」に加盟しておけば、外国人であることの不利益は、ほぼ解消されるということです。

(2)PTC(特許協力条約)

「パリ条約」」よりもさらに進んだものとして制定された条約で、加盟国のひとつにPCT出願を行えば、すべての加盟国に一括して出願指定をしたことになります。

つまり、外国の出願を考える際には、とりあえず、日本語で日本の特許庁に出願しておけばよいということですね。これはとてもお手軽ですよね。

◆こんな便利な条約があるならば、それで充分なのでは?

実はそうとも言えないんですね。
PCTルートで出願を行うと、一括で手続きが済んでいるように思えますが、しかし、それは「出願指定」がなされたというだけの話で、結局は、指定各国へ個別に出願し、各国の審査を受けることになるのです。

ですからPCTによって、複数の国で等しく特許権が認められるといった、いわゆる「国際特許(世界特許)」なるものが与えられるというわけではありません。

―世界共通の「国際特許」というものは、仮想的な概念でしかなかったのです。

中国の台頭が起爆剤―「国際特許(世界特許)」の幻想がついに実現する?

商標紛争の渦中にあるアップル―「iPad」を手に取る上海の顧客

今まで日本の特許庁は、ひとつの国で特許となった発明が、世界中で特許として認定される「国際特許」の実現を目指して、国際的な協議を行ってきました。

しかし、南北問題などに代表される地域差などから生じる溝は埋められず、「国際特許」への議論は暗礁に乗り上げていたのが現実でした。

しかし、この『商標NOW』でも再三取り上げてきましたが、現在、中国の知財トラブルが頻発しており、その問題の大きさは、いよいよ看過できないところにまで来ているのです。

中国の特許出願件数は、2011年に初めてアメリカを抜き、世界1位となりました。
数の上でも、国際的な影響力の上でも、中国での知的財産権に絡む摩擦は、もはや無視できるものではありません。

6月からの会議で、「発明公開から申請までの猶予期間」や、「特許審査中の技術公開」などについて、共通のルールを制定するための話し合いがなされる予定だと言います。

「特許の世界共通化」と聞くと、すぐに一元的な「世界特許」というものを連想してしまいがちですが、この協議の第一の目的は、あくまで現実的な問題としての“中国の取り込み”にあるように思えます。

中国におけるアップルの商標権侵害問題では、改めて知的財産に関するローカルリスクの脅威を思い知らされました。
そのリスクを回避するためにも、まずは共通の特許制度の枠組みを作り、そこに中国を取り込んでしまえば、アップルの轍(てつ)はもう踏まなくても済む、というわけですね。

「世界特許」の実現には、まだまだ乗り越えていかなければならない壁は多く、その実現には相当な困難が伴うことでしょう。
しかし、6月からの協議は、海外における特許紛争やローカルリスクを軽減してくれる、実際的な働きかけにはなるものと思います。

この協議がどれほどの成果をもたらすか、期待しながら経過を眺めていきたいですね。

2012年03月12日

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